『女』という生き物。

 自分の弱点。そこから目をそらしたままでは、成長することはできない。

 そう、いつかは来ると思っていたのです。

 映画『ブラック・スワン』を観たとき、痛切に胸に響いたもの。
 花房さんのイベントで、がつんとやられたあの衝撃。

 
 ええ、そうです。ワタクシはエロ描写苦手なんです。文章に全く色気がないのです。

 今までは、そういう作品を書かなかったので、まだごまかせていたわけなのですが……。
 しかし、今回描こうとしている女性の恐ろしさを描くには重要な要素。
 
 
 さて、色気を出すにはどうしたらいいか? 本人に色気が足りないからだ。
 そのためにはどうしたらいいか? 男遊びをしろ。
 単純明快な答えが返る。


 ……うーん、完全に『ブラック・スワン』の世界ですね。
 狂気の世界に迷い込んだらどうしてくれるんですか。


 真面目で貞節。そりゃ悪いことではないけど、作家としてはつまらない、とさ。

 かといってねぇ……難しい問題ですねぇ。

 表現の幅としては欲しいところですが、そのために自分を変えられるのか。禁欲精神って(好まれるかどうかはさておき)自分の作品の中に結構浸透しちゃってるものなので、根源にある作家性すらも失ってしまうような気がしますよ。

 何かこう……子供の頃から培ってきた考え方、自分自身の在り方全てに影響を与える、どでかい問題のような気がしますよ。

 ほじくってみたら、自分では対処できないものを掘り起こしそうなので、このまま眠らせておきたいのですが。

 どう変わるかどうかはさておき、向き合うことが必要だというのは、わかります。
 だって己を知らないと、やはり深い作品を描くことはできない気がするし。


 うん、書けない理由はまぁわかってるんですよ。
 苦手意識。どうもそういう話題に抵抗感があるのですね。
 そんな気持ちで描いたって、そりゃあ色気は出ないわなぁ。

 嫌悪感、とまでは多分、いかないと思うんですがね。
 とりあえず、花房さんの官能小説は楽しく読ませていただきましたし。
 ただ、どぎつい映像だったり、そういうのを自分が口にする(聴くのはまだよし)のに抵抗があるのでしょう。
 

 自分が『女』であること、それを利用すること自体にも抵抗があるのかもしれない。
 ぶりっことか嫌いですしね。よく、ぶりっこだって思われるみたいだけど。だから余計に嫌なのかもしれない。

 
 『女』であるということについて。

 少し前に実家に帰ったとき、中学時代からの友人に会いました。
 私を含めて四人グループだったのですが、そのときは一人旅行中で(帰ってくるならもっと早く連絡しろ、と怒られました)残り二人と会ったのですが、そのときにもふと、『女』というものについて考えさせられたものです。

 一人はA子さん。本人いわく流されやすいタイプで寂しがり屋。セフレから始まった恋のこととか、彼氏に浮気がバレて喧嘩になったとか、そんな相談を受けたりします。
 あたいに話したって、助言らしい助言はできませんが、彼女のことを軽蔑する気は全くないです。
 かといって、真似はできんなぁと思うのですが。

 そのときは、彼氏との旅行目前らしく、一緒に下着屋さんにいきました。

「勝負っスか!?」

 とはやしたてる青谷に

「どうせすぐ脱がされるから意味ないんだけどね」

 と、さらっと返されました。

 ……そうか。こういうセリフが言えないんだな。「私、負けましたわ」……反対から読んでもいける。

 自分の気持ちを盛り上げるために買うそうです。それは何となく、わかる気がするな。見せるためとかじゃなく、新しくて可愛いものを身につけるとウキウキするものね。

 これ可愛い、とかこーいうの好き、とか。女の子らしくはしゃいで買い物をしましたよ。
 実は、友達と下着屋さんに行くのって初めてで(いつもは一人だから)、何やら気恥ずかしい感じがしたんですが。

 気がつけば何故か、おそろいの下着を買ってましたさ。
 ……友達とおそろいのもの買ったことはあるけど、下着のペアルックは初めてですよ。
 たまたま、お互いに気に入るのがあっただけなんですけども。

 ちなみに彼女、ナイスバデーです。(古いと言われたがあえて使う)
 サイズ知ってちょっと愕然。
 グラマラスというより、その細さで何でそんなに乳あるの、って感じです。
 
 ……そんな人とよく同じ下着買いましたねー、青谷さん。いいんだ。別に一緒に着るわけじゃないんだから。見せ合うわけじゃないんだから。
  

 えー、そしてもう一人、B美ちゃん。小柄で、いつも少年のような格好をしています。
 彼女は言動もどちらかというと幼い感じで、恋愛話になると首を傾げて黙っているようなタイプ。

 この買い物のとき、実は彼女も一緒でした。
 ところが、何故か下着屋には入らない。

 まるで結界でもあるかのように、入り口にさえ近づかない。
 店の前でうろうろしながら、時々ちらりとこちらを窺うのです。

 彼女(もしくは姉)がいきなり下着屋に入って、どうしていいかわからずに戸惑っている純情少年、みたいな感じ……。

 うん、まぁね。下着屋さんて、何か恥ずかしいよね。わかるけどね。


 ちなみにその後、下着とか普段どうやって買ってるの? と聞いてみると「……ネットで……」と言ってました。
 そうだよね。ネット、便利だよね。しかも安いし。

 興味ない買い物に無理に付き合うこともないと思うのだけど、一歩たりとも店に入ろうとしないその姿は妙に印象的でした。

 彼女も何か、『女』らしくすることに抵抗があったりするのかなぁ……。

 A子さんはよくも悪くも『女』として生きていて、悩みながらも足取りはしっかりしてる感じがする。それは本当にすごいな、と思う。

 B美ちゃんが『女』として振舞うのを苦手とするのはもったいないな、と思うけど、その気持ちもわかる気がする。


 何か、こうしてみてると私が一番中途半端な感じがするな。
 自分の中の『女』を、やはり認識する必要がありそうです。
 先生たちはどうも『小悪魔』や『悪女』に仕立て上げたいようなのですが(おもしろがられとる……)私には荷が重そうですよ。

 ただ、貢ぐか貢がせるかならば、貢がせる方だ。

 ……いや、ない袖は触れないからね。単純に。
 しかし、こんな真面目に悩んでる私が「蛇女」とか「拷問器具好き」とか、わけのわからんことを言われるのは一体、どういうことなんでしょう。
 解せぬ。